15

 気がついたら俺は自分の部屋に居た。どうやって帰って来たのか分からない。

「好き…」

 って、なんだよ。そんなこと言われても困る。俺はごろりとベッドに寝転んで、顔の上に腕を乗せる。でもこれで、不可解な辛島の行動が分かった。俺と同じ高校を選択、一緒に下校、俺とだけ関わる理由。
 知らなかったとは言え、俺は辛島を傷つけ、怒らせた。

「でも、何で俺のことを」

 嫌いならまだしも、好きって。何でだ? 俺は何もした覚えがない。そもそも、いつからだ?
 もやもやとして、あいつの顔が頭から消えない。そんな状態のまま時間だけが過ぎた。










「眠れなかった…」

 鳥の鳴き声と眩しい朝日が憎い。俺は欠伸をしてのそのそとベッドを降りる。朝になったと分かった途端眠くなった。しかし今から寝ては完全に遅刻だ。辛島と話をしなければいけない。まず謝ろう。それから…。それから、どうすればいいんだ。辛島には悪いが俺は辛島とは付き合えない。
 ぱっと辛島の顔が再び頭に浮かんできて、げんなりとしながら溜息を吐く。
 部屋から出ると、奈々美が目を丸くした。

「お兄ちゃん、目が死んでる」
「げっ、まじ?」

 顔を触る。奈々美は心配そうな顔をしてこっちを見る。俺はそういえば、と奈々美の言葉を思い出す。
 『辛島くんはお兄ちゃんのこと好きだと思うけどね』
 『仲良くなりたいんだよ』

「…奈々美」
「ん?」
「辛島のこと…奈々美が言う通りだったみたいだ」

 「おや」奈々美はわざとらしくそう言って笑って見せた。奈々美が言った好きっていうのは普通に友達だと思うけど。ていうかそこまで気づいていたらやばい。

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