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 フォルダを開くと、奈々美の写真がずらーっと表示された。小さい頃から最近のまでちゃんと入っている。

「うわ」

 顔を上げると、清水が顔を引き攣らせていた。

「何だよ」
「写真ありすぎ」
「確かに…探すの大変なんだよな」
「気にするべきところはそこじゃない」
「え?」

 「いや、なんでもない」何だか疲れたような顔をして溜息を吐いた清水に首を傾げる。まあ清水は放置だ。どれを見せよう。見せたい写真がありすぎて困る。

「何でもいいから早く見せてほしいんだけど…」
「まあもうちょっと待てって」
「はいはい…」

 呆れたような声が聞こえた。

「ああ、そうだ。鈴谷は腐れ縁って言ってたけど、実際のところどうなの?」

 清水が辛島に話しかける。俺は驚いてスマホを落としそうになった。何を訊いてるんだ!

「腐れ縁…」

 俺ははっとして辛島に視線を遣った。俺は息をのむ。辛島が傷ついているように見えた。――いや、確実に傷ついている。僅かな表情の変化だが、俺には分かった。

「……お前には関係ないだろ」
「まあそうだけど。いや、言いたくないならいいんだよ。だから睨むなって」
「睨んでない。生まれつきだ」

 いやさらっと嘘吐くなお前。小さい頃は可愛かっただろ…!
 俺は口を引き攣らせ辛島を睨む。辛島は俺の視線を無視した。俺は辛島から視線を外し、スマホの画面を清水に向ける。

「ほら、これ」
「おお、やっとか」

 どうだ可愛いだろうとにやにやする。

「うん、確かに可愛い」

 そうだろう! 俺は続きの言葉を待った。しかし清水はそれっきり何も言わない。しかも画面から視線を外した。

「……えっ、それだけ?」
「え? まあ」

 俺は無言で清水を蹴った。結構強めに蹴ったのに、清水は苦笑しながら痛い痛いと言うだけだった。畜生。

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