10

「いや、あの…」

 仕方ない。適当に何か言って、終わりにしよう。

「えーっと、大丈夫か? 顔…」
「…まあ」
「まあって、すげー痛そうじゃん」

 ていうか放置でいいのか、それは。病院とか行った方がいいんじゃ…。

「別にこれくらいなんともない」
「強がるなよ」
「強がってるように見えるか?」

 ……見えない。
 俺は小さく息を吐く。「はいはい、そうですか」辛島はじっとこっちを見つめる。もう話すこともないし…と思っていた俺は、あることを思い出す。

「そうだ辛島! テメェ奈々美にちょっかい出すんじゃねえよ!」
「は?」
「誰? 鈴谷の彼女?」

 今まで黙っていた清水が興味津々な様子で訊ねてくる。俺は横目で清水を見て、にやりと笑った。

「世界一可愛い俺の妹」
「シスコンかよ」

 シスコンの何が悪いんだ! ていうか奈々美が可愛いのが悪い。

「何、ちょっかいって」
「いっ、色々だよ!」
「してない。興味ねえし」

 興味ないって! あんなに可愛い奈々美に興味ないとか! いや、興味あっても困るけど…。そういえば辛島って彼女とか全然つくらないよな…。自称彼女は沢山いたし、凄くモテてたけど。辛島が好きになる子って、どんな女の子なんだろうか。

「その奈々美ちゃんってどんな子なの? 俺興味ある」
「……見せたら好きになる」
「そんなに? 尚更興味あるわ。鈴谷の妹なら贔屓目なしに可愛いだろうし」

 清水が爽やかな笑みで俺の肩に腕をまわす。俺はどうしようかと迷ったが、どれだけ奈々美が可愛いかということを自慢したくなってスマホを取り出した。

[ prev / next ]



[back]