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 将来は俺のお嫁さんになるって言ってたじゃんか…! 

「な、奈々美…。もしかして辛島のこと…」
「ええ? やだ、別にそんなんじゃないよ。目の保養っていうか…。あ、お兄ちゃんもカッコいいよ」
「なっ奈々美…!」

 感極まって抱き付くと、げし、と蹴られた。「抱き付くな変態」

「お兄ちゃんって、辛島くんのこと嫌いなの?」
「嫌いか好きかと言われると嫌いだな」
「辛島くんはお兄ちゃんのこと好きだと思うけどね」
「すっ…!? いやいやないだろ!」

 俺は辛島を思い浮かべた。無表情でじっとこっちを見て来る姿しか思い浮かべられない。まったく好意も感じられないし。辛島は俺のことなんてどうとも思っていないだろう。
 否定した俺に対し、奈々美が呆れたように目を細めた。

「あのねえ、辛島くんが何であの名前さえ書いたら受かるような高校に入ったと思うの。お兄ちゃんがあそこを選んだからでしょ。なんとも思ってないならこんなことできないよ」
「う…それは、何か違う理由が…」
「さっき言ったじゃん。お兄ちゃんのこと訊かれたって」

 何も返すことができず、俺は口を閉じる。

「仲良くなりたいんだよ」
「そうかなあ…」

 隣で奈々美がうんうんと頷く。初対面でいきなり死ねと言ってきた奴が…? いやあれは俺も悪かったけど。

「仲良くなったら連れてきてね」
「さてはお前それが目的だな!?」

 奈々美はにっこり笑って首を傾げた。可愛い。万が一億が一にも仲良くなっても連れて来ないと誓った。

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