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 意味分かんねえ。俺はモヤモヤとした思いを抱いたまま家に帰った。

「ただいま」
「あ、お兄ちゃんお帰り」

 妹の奈々美がリビングからひょっこり顔を出して笑った。俺はもう一度ただいまと口にして、靴を脱ぐ。
 リビングのソファに座ると、奈々美も隣に腰を下ろした。何だ? なんだかやけに機嫌がいい。……も、もしかして好きな奴ができたとか? だ、だめだどこの馬の骨とも分からない男になんて渡せない。誰が許しても、俺が許さない。
 奈々美はにこにこしながら口を開いた。俺はどきどきとしながら言葉を待つ。

「高校どうだった?」
「え。高校?」

 なんだ、高校のことが聞きたかったのか。安堵してほっと息を吐いた。そしてふふんと笑みを浮かべる。

「ま、いい感じだな。友達もできたし!」
「いやお兄ちゃんのことはどうでもいいから」
「お前そんな可愛い顔してお兄ちゃんになんてことを…!」

 がーんとショックを受けていると、更にショックを受ける一言が妹の口から飛び出した。

「辛島くんだよ! 同じクラスだった?」
「あ、うん。最悪なことに同じ……ってちょっと待てコラ」

 俺は口を引き攣らせる。

「何で辛島が同じ高校だと知っている……!?」
「え。聞いたから」
「なんですと」

 あいつ俺に何も言わない癖に、何で奈々美に…! ていうかいつ聞いた!? それにどうやって…まさか連絡先交換してるとか言わないよな!?

「だいぶ前にね、お兄ちゃんの進路教えてって言われて、教えたの。そしたらお兄ちゃんと同じとこ受けるって」
「お、おま、勝手に言うなよ…! そんで訊かれたことちゃんと俺に言えよ…!」
「驚かせたいからこのことは秘密って言われたから…」

 な、奈々美。お前は何故頬を染めているんだい…。

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