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「ぶっ殺してやる!」

 ゴリ――不良が振りかぶる。俺の体は考える前に動き出した。
 俺と奴らはそこまで離れていない。なんとか間に合うと思った瞬間、辛島と目が合った。辛島の目が見開かれ、気がついたら倒れていたのは辛島ではなくゴリ…不良だった。
 え、何が起こった?
 俺は口を開けたままぼけっと辛島を見つめた。クラスメイトも唖然とした顔をしていた。
 辛島はこっちを見た。

「おい」
「へあっ!?」

 突然話しかけられ、驚いて変な声が出た。

「ななな何でしょう!?」
「危ないだろ、当たったらどうすんだ」
「えっ、あ…え、俺?」

俺は自分を指差す。辛島は無言で頷き、屍と化したゴリラを蹴った。

「あ、ありがとう…?」
「ん」

 ……う、うーん。なんか色々腑に落ちないんだけど。

「帰るぞ」
「え…いや、なぜ? 一人で帰れよ」
「どうせ近くだろ」
「嫌だ!」

 少しだけむすっとした辛島が俺の腕を掴む。そのまま強引に俺を連れて行こうとするから、慌てて俺は言った。

「分かった! 分かったよ! だから鞄取りに行かせて!」
「……ふん」

 辛島は乱暴に俺の腕を放すと、じろりとこっちを睨んできた。

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