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 いやしかしここで怯んではいけない。俺は睨み返した。こいつがいることで、俺の昔の恥ずかしい記憶が蘇るだけでなく、女の子がほとんどこいつにメロメロになっちゃうんだよね。あ、メロメロってもう死語かな?
 この学校には俺の好みの子はあんまりいないからまだいいけど。ちなみに俺の好みの子は清楚な子。ビッチっぽい子はちょっとな。チャラいってよく言われる俺が言うのもなんだけど。清楚な子はこいつとか、他のイケメンを好きになる子ばかりだから悲しい。俺のこの見た目がいけないのか…。でも服装とか髪とかはともかく、垂れ目とか雰囲気とか言われても…。整形しろっていうのか。雰囲気はどうしたらいいんだよ! と言う感じであっという間に年月が過ぎ、付き合ったことは今までで一回しかないという悲しい現実。まあ、結構長く続いてたけど。唯一付き合えたその子の存在をこいつにバレないように大変だったな…。
 …とりあえず、もう関わらないようにしよう。

「えーと、俺の席は…」

 奴は辛島で、俺は鈴谷だから少しは離れているはず。奴の隣を通り過ぎ、自分の名前が書かれた紙が貼ってある席を探す。案の定、辛島の数席後ろに俺の席があった。個人的にはもっと離れていてほしいところだけど、仕方ない。
 俺は座ると、ポケットからスマホを取り出す。今ハマっているゲームを開いてやっていると、横から、おっという声が聞こえた。

「それ、俺もやってる」
「誰?」
「清水。清水優樹。お前の前な」

 宜しく、と手を差し出される。俺はスマホを左手に移して、その手を握り返した。

「俺は鈴谷慧。宜しく」

 清水はにこにこと人好きのする笑みを浮かべながら席に座った。不良っぽくはない。爽やかなイケメンだ。

「清水ってなんかスポーツやってる?」
「ん? ああ、うん。テニス」

 そういえばこの学校、結構運動部が強いとか聞いた気がする。だからここを選んだのかもしれない。

「あ、そうだ。フレンドならない?」

 思い出したように清水がスマホを取り出し、俺に見せる。

「いいよ。これ、面白いのにあんま人気ないから全然周りでやってる奴いなくてさ」
「俺の周りも全然。やったらハマるって言ってもどいつも興味なさそうだった」

 

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