おまけ

本編直後の話/in保健室





「今日は熱いな」

 会長が俺の手を握ってニヤニヤと笑う。そりゃ、好きな人に触られたら、いくらいつも冷たくても熱くなる。――好きな、人。キスをしてもなんだか実感がなかったが、こうして好きな人だと確認してみると、俺って会長のこと好きだったんだな、と思う。

「駿」
「えっ!?」

 どきっとして顔を上げる。今、名前を呼ばれた?

「何だよ、駄目か?」
「い、いえ、そんな! 何とでも呼んでいいですけど…会長、俺の名前覚えててくれたんですね」
「当たり前だろ。……で」

 会長が意味深に俺を見る。

「貴志」
「え」
「いつまでも会長じゃあれだろ。特別に名前で呼ばせてやるよ」

 ふふん、と笑う。俺はにこりと笑った。

「いえ、結構です」
「おい」

 ひくりと引き攣る口が面白くて声を上げて笑う。そんな俺を見てむすりとする会長の手を握り返す。顔を見られない。ちょっと緊張する。

「――貴志」
「……っ」
「……先輩」

 流石に呼び捨てはまだ無理だ。そっと顔を上げて様子を窺うと、会長の耳が少し赤い。

「…会長って変なところで照れますよね」
「うっせえ」

 ぱしっと俺の頭を叩く。

「――会長じゃなくて、貴志」

 俺は返事の代わりに、ぎゅっと手を握り締めた。










fin.

続きます。

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