▼ おまけ
本編直後の話/in保健室
「今日は熱いな」
会長が俺の手を握ってニヤニヤと笑う。そりゃ、好きな人に触られたら、いくらいつも冷たくても熱くなる。――好きな、人。キスをしてもなんだか実感がなかったが、こうして好きな人だと確認してみると、俺って会長のこと好きだったんだな、と思う。
「駿」
「えっ!?」
どきっとして顔を上げる。今、名前を呼ばれた?
「何だよ、駄目か?」
「い、いえ、そんな! 何とでも呼んでいいですけど…会長、俺の名前覚えててくれたんですね」
「当たり前だろ。……で」
会長が意味深に俺を見る。
「貴志」
「え」
「いつまでも会長じゃあれだろ。特別に名前で呼ばせてやるよ」
ふふん、と笑う。俺はにこりと笑った。
「いえ、結構です」
「おい」
ひくりと引き攣る口が面白くて声を上げて笑う。そんな俺を見てむすりとする会長の手を握り返す。顔を見られない。ちょっと緊張する。
「――貴志」
「……っ」
「……先輩」
流石に呼び捨てはまだ無理だ。そっと顔を上げて様子を窺うと、会長の耳が少し赤い。
「…会長って変なところで照れますよね」
「うっせえ」
ぱしっと俺の頭を叩く。
「――会長じゃなくて、貴志」
俺は返事の代わりに、ぎゅっと手を握り締めた。
fin.
続きます。
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