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 くい、と顎を持ち上げられた。会長の顔が角度を変え近付いてくる。俺は静かに目を閉じた。

「島田、無事か!」
「どわあ!」

 いきなりドアが開いて、驚いた俺は思わず会長にアッパーを繰り出してしまった。ごふ、という声が間近で聞こえた。
 バタバタと近づいて来た男――風中先輩が俺の肩を掴む。

「島田、大丈夫か!?」
「あ、はい。なんとか…」
「……っテメェ島田! 何すんだ!」

 はっとして会長に視線を戻せば、顎を押えて俺を睨んでいる。その目はちょっと涙目だ。

「…何してんだ、泉田」
「テメェの大事な後輩から強烈な一撃を貰ったんだよ。…ッチ、いいとこだったっつうのに、邪魔しやがって」
「す、すみません会長…」

 会長は、ふん、と鼻を鳴らした。俺は苦笑して、風中先輩を見上げる。風中先輩は俺に笑いかけると、視線を会長に移す。

「あそこに居た奴らから事情を聞いた。…島田を助けてくれてありがとう」
「そう思うならさっさと出て行け」
「まだ話は終わってない。…転入生だが、数日間の停学処分にした。異論はないな?」
「ああ、構わねえよ。――風中、俺は以前秀も気に入っているから、手に入れると言ったな」

 「ああ、それが?」風中先輩は眉を顰めながら先を促す。会長は肩を竦めた。

「俺は何を言っても嘘の言葉を信じ込む奴や、何も悪くないのに殴る奴は要らない。本当に欲しい奴ができた。一人だけだ。――いいか?」

 会長は俺を優しく抱き寄せる。風中先輩はじっと会長を見つめて、俺を一瞥した。

「お前、変わったな。…いや、正気に戻ったと言うべきか?」

 風中先輩は口元を緩めながら言うと、背を向けた。

「泣かせたり傷つけたらぶっ殺す」
「肝に銘じておく」

 最後に肩を少しだけ竦めると、そのまま保健室を出て行った。ぼおっとそれを見送っていると、おい、と焦れた声が耳元で囁かれた。

「で、好きだっつってんだけど、何か言うことは」

 むすっとした顔をしているんだろうな。俺はくすりと笑って、ゆっくりと振り向くと、会長の唇に噛みつくようなキスを贈った。















fin.


長かった……!
ここまで読んでくださってありがとうございました。とても楽しかったです。
リクエストありがとうございました!皆様も楽しんでいただければ、幸いです。
でもちょっとだけおまけがありますのでもう少しお付き合いください。
登場人物紹介もその時に。




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