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「なんで無視するんだよ! さいてーだぞ!」
いや無視はしてない…。俺は苦笑して、捕まれている手首を見る。血の流れが止まってるんじゃないだろうか…。
「ごめん、でも、俺急いで――」
「秀、何をしてるんですか?」
背後から声がかかる。この声。そして敬語。恐らく…副会長だ。やばい。俺は顔を引き攣らせる。
「あ! 光! おせーぞ!」
「すみません、……そこの彼は?」
いきなり低くなった声にぞわりとする。恐る恐る振り返ると、笑顔だが目が笑っていない副会長と目が合う。
「聞いてくれよ光! こいつが俺を無視するんだ!」
だから無視してないって! と心の中で叫ぶ。俺がどれだけ無実を訴えても副会長は信じてくれないだろう。
「秀を無視するなんて…あなた何様ですか? それに、馴れ馴れしく手まで握って…」
副会長は転入生が掴んでいる手首を睨みつける。いや、どうみても馴れ馴れしくないし握ってもいない。それに、何様だと言われても。勝手に転入生が怒ってるだけだ。
ていうか、そろそろ会長から遅いと連絡が来そうだ。ここに来て助けて貰えたらと思うが、会長は転入生が好きなわけだし、もしかしたら俺が睨まれるかも…。そう考えると悲しくなって、視線を落とす。
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