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 最初と比べて仕事スピードは上がり、より正確にできるようになったが、会計が戻って来たなら俺は必要ないのでは? と考えてしまう。元々俺は生徒会ではないし…。しかし会計も会長も何も言わないし、親衛隊からは宜しくと言われるしで結局は生徒会室へ向かってしまう。山下先輩は今すぐにでも止めてと言うが、風中先輩は苦笑するだけで何も言わない。
 さて。

「おい! 聞いてるのか! 俺の話を聞かないなんて失礼な奴だな!」

 思わず耳を塞ぎたくなる声が頭痛を促す。生徒会室に向かっていた俺は、今、絡まれている。誰にって、転入生にだ。

「聞いてるけど…。あのさ、俺急いでるから」
「お前、貴志たちをどこへやったんだ!」

 人の話を聞けという割に、自分は聞く気はないんだな。我儘な子どもを相手にしているようで頭が痛い。ええと、貴志っていうのは会長だっけ? 何で俺がどこかへやったことになっているんだ。

「会長たちは仕事をやってるけど…」
「うそだ! 貴志たちは仕事をしてないって言ってたぞ! 光が言ってた!」

 光って誰。副会長? 

「その人…」
「光だ!」
「……、光さんがどう言ってたか知らないけど、会長と会計は仕事をしてる。してないのは副会長たち」
「なんでそんな酷いこと言うんだ!?」
「酷いことって、会長たちが仕事してないって言うのは酷いことじゃないのか?」

 転入生はうるさい! と叫んだ。俺は再び子どもか、と内心溜息を吐く。実際に吐いてしまったら面倒なことになる。

「とりあえず、俺は行くから」
「待て!」

 転入生が俺の手首を掴む。ぎりぎりと力を加えられ、痛みで顔を顰める。


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