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苛められるというのは杞憂だったようで、一週間経っても机は荒らされないし、不幸の手紙なんかもなかった。ただ一度、会長親衛隊の隊長という人に呼び出されたが制裁でも忠告でもなかった。そもそも教室から連れ出されなくて、その場で一言だけ告げられた。
『会長様をよろしくお願いします』
……いや何で俺? と思うわけだが。何でも転入生より俺が全然マシだし、風中先輩とも仲が良いから信頼できるとのことだ。兎に角よかった。
「島田くん、聞いてる?」
さて、更なる問題というか――厄介事が目の前に飛び込んできたわけだが。
俺は思考を頭の隅に追い遣って、にこにこと笑みを浮かべている男を見上げる。
「…何のご用でしょうか?」
「今から会長のとこ行くんだよね? 一緒に行こ」
男――会計は俺の腕を引く。それに引っ張られながら、疑問に思ったことを口に出す。
「あの、転入生は…」
「ああ、秀ちゃん? 漸くあの煩い口を黙らせることができたからもういいんだよ」
えっ?
なんか今笑顔でさらっと凄いこと言わなかったか。
「ほんと大変だったんだよー、聞いてくれる?」
「は、はあ…」
俺は仕方なくやれ声が煩いだの、やれ力が強いだの、やれ我儘だのといった転入生に対する愚痴を聞きながら生徒会室に向かった。転入生のことを好きではないとは分かっていたが、ここまで嫌っていたのは知らなかった。
生徒会室のドアをノックしようとすると、その前に会計がガチャリとドアを開けてしまった。中にいる会長が顔を上げて、俺を捉えてから視線を横に移す。訝しげに眉を顰めた。
「荒田…?」
「はろー、会長」
「はろーじゃねえよ、何で島田と…」
「偶然会ったからね。一緒に来たんだよ」
ね、と言われるがあれは果たして偶然だっただろうか。会計が俺を待ち伏せしていたような気がするんだけど。
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