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 さっさと仕事を終わらせようと書類に目を通す。綺麗な字だな。イケメンは字まで綺麗なのか…。
 目を通していると、視線を感じて隣を見る。いつのまにかペンを置いてじっとこっちを見つめていた。目が合う。なんか、さっきもこういうのあったな。会長って人間観察とか好きなのか?

「会長、手が止まってるんですけど」
「今休憩してんだよ」
「…こっち見ないでくれません?」
「なんだ? 照れてんのか?」

 ずい、と俺の方に体を寄せて顔を覗き込んでくる。ぴく、と体が反応して、会長が口角を上げる。

「ふん、まあこの俺に見つめられてんだから、当然だな」
「会長って生きるの楽しそうですよね」
「はったおすぞ」
「いてっ」

 笑っていると、ぽか、と頭を軽く殴られる。はったおすと言いながらも顔は笑っていて、会長の顔の疲れが少し取れて見えた。

「……おい、島田。ちょっと話付き合えよ」

 すっと俺の手から書類を抜き取った会長。俺に拒否権はないみたいだ。俺は肩を竦めて、」いいですよと苦笑した。ま、コーヒーもあるしな。冷めないうちに飲んでしまいたいし。付き合ってやろう。……っていうのは上から目線だが。

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