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 会長以外の生徒会役員に会うかもしれないため、慎重に生徒会室へ向かった。無事誰とも遭遇することなく生徒会室に着き、再び静かにドアを開ける。会長が集中しているかもしれないからな。そう配慮してのことだったが、結局音は鳴ってしまう。しかし会長は俺に気付かないで――……って。

「やっと来たか」

 すげえこっち見てるあの人。
 俺はむっすりとした顔で腕を組んでいる会長に近付く。

「すみません、急いで来たんですけど」

 というのは嘘…なわけではないが、ちょっと早足で来た程度だ。会長は胡乱な目で俺を見上げるが、チッと舌打ちして、書類を俺に渡す。

「とりあえずコーヒー淹れてくれ。その後はこれのチェックを頼む」

 おお、先輩たちが言っていたとおりの仕事だ。俺ははいと返事をして書類を受け取る。……で、ところで俺はどこでやればいいんだろう?
 きょろきょろとして突っ立っている俺を呆れたように見上げる会長。

「何やってんだよ、さっさとやれ」
「隣、座ってもいいですか?」
「はっ?」

 会長は何故か動揺してぱちぱちと目を瞬かせる。座っちゃまずいのだろうか。隣の方が効率がいいから、そっちに座りたいんだけどな。
 無理ならいいですと言おうとする前に、会長が鼻を鳴らした。

「ふん、仕方ねえ。特別に座らせてやる」
「はあ、どうも」
「おいもっと喜べよテメェ」

 そんなこと言われても、何を喜べと言うんだ。仕方なく嬉しいですと言ったら睨まれた。棒読み過ぎたらしい。俺は見なかったことにして、書類をデスクの上に置くと、給湯室へ向かった。

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