18

 風中先輩は俺の頭をポンポンと優しく叩く。

「ま、頑張れ。辛くなったら泉田のことは気にせず、止めていいからな」
「あと、何か意地悪されたら遠慮なく言うんだよ? すぐ飛んでくからね」
「ありがとうございます」

 礼を言って頭を下げる。それから暫く世間話をして、風紀室を後にした。












 風紀室を出た俺は、寮に向かって歩き出す。生徒会室に行った方がいいのか分からない。まあ、呼ばれたら行けばいいだろう。――と思った瞬間だった。登録したばかりの番号から電話がかかってきたのは。

「……はい」
『おせえ』

 一言目からお怒りモードである。遅いってことは…待ってたのか?

「今日はもういいかと思って帰ってたんですけど…」
『はあ? マジかよ、ッチ…もう寮か?』
「まだ寮じゃありませんけど」
『なら来い』

 ブチッ。電話が一方的に切られ、俺は口を開けたままスマホを見つめる。…俺に拒否権はないんだな。まあいいけど。
 言い方が若干腹立つんだよなあ、と思いながら俺は踵を返し、何度目かの生徒会室へ足を向けた。
 ――ん? 俺は視線を感じて振り向く。しかし、振り向いた先にはちらほらと人はいるが、俺に目を向けている人はいない。皆誰かしらと談笑している。良く見る光景だ。何もおかしなところはない。
 気のせいか…? 何だかモヤモヤとしたまま、俺は足を進めた。


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