▼ 18
風中先輩は俺の頭をポンポンと優しく叩く。
「ま、頑張れ。辛くなったら泉田のことは気にせず、止めていいからな」
「あと、何か意地悪されたら遠慮なく言うんだよ? すぐ飛んでくからね」
「ありがとうございます」
礼を言って頭を下げる。それから暫く世間話をして、風紀室を後にした。
風紀室を出た俺は、寮に向かって歩き出す。生徒会室に行った方がいいのか分からない。まあ、呼ばれたら行けばいいだろう。――と思った瞬間だった。登録したばかりの番号から電話がかかってきたのは。
「……はい」
『おせえ』
一言目からお怒りモードである。遅いってことは…待ってたのか?
「今日はもういいかと思って帰ってたんですけど…」
『はあ? マジかよ、ッチ…もう寮か?』
「まだ寮じゃありませんけど」
『なら来い』
ブチッ。電話が一方的に切られ、俺は口を開けたままスマホを見つめる。…俺に拒否権はないんだな。まあいいけど。
言い方が若干腹立つんだよなあ、と思いながら俺は踵を返し、何度目かの生徒会室へ足を向けた。
――ん? 俺は視線を感じて振り向く。しかし、振り向いた先にはちらほらと人はいるが、俺に目を向けている人はいない。皆誰かしらと談笑している。良く見る光景だ。何もおかしなところはない。
気のせいか…? 何だかモヤモヤとしたまま、俺は足を進めた。
[ prev / next ]
[back]