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「この先のバルコニーですよ。役員専用のね」
「へえー! そんなのあるのか!」

 へえ、そんなのあるのか。
 転入生と全く同じ反応をしてしまった。一体どんな感じなんだろう。ちょっと気になる。……いや、というか、生徒会室に行くんじゃないのか…。会長がいないことを誰も気にしないのか? まあ々役員だからと言って常に一緒にいるわけじゃないだろうけど…。何か思うところはないのだろうか。

「なあ! そういえば貴志はどこにいるんだ!?」

 どきっとする。心の中を読まれたかと思うほどのタイミングだ。相手は俺に気付いていないから読むなんて有り得ないことだが。
 これで一度生徒会室に寄ることになるだろうかと思ったが副会長は笑顔で言ってのけた。

「会長はどこかでフラフラと遊んでるんですよ」

 なっ――。
 俺は思わず飛び出しそうになった。いや、するつもりだった。できなかったのは…茶髪の男――恐らく会計――がこっちを見て、人差し指を口元へ遣ったからである。大人しく一歩下がると、にっこりと笑って頷いた。俺がいることに気づいていた……? 
 会計はすっと俺から視線を外すと、ゆったりとした歩調でついて行っている。よく見れば、副会長たちとは転入生に向ける顔が少し違うような…。
 首を傾げているうちに、声は遠ざかり、やがて姿も消えていった。俺は副会長の会長についての言葉と会計のことでもやもやを残したまま、漸く目的の飲み物を買って、生徒会室へ戻った。

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