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(side:駿)

 こんなもんかな、と背伸びをする。会長に終わったことを告げようと思って顔を向けたら、真剣な顔で仕事をしていた。思わずその姿に見惚れる。やっぱり格好いいんだなあ。皆が格好いい格好いいと騒ぐ気も分からないでもない。まあ、俺は恋愛感情とかそういうんじゃなくて、憧れとか尊敬とか、そういう感じだけど。
 じっと見つめて視線に気づかれるのもなんなので、俺は視線を外した。さて、どうしようか。声をかけるのは躊躇われる。とは言えこのままずっとここにいるのもな。
 俺はもう一度会長に視線を遣る。頑張ってるみたいだし、なんか差し入れでも…。どうやら生徒会室には給湯室があるみたいだが、勝手に使うのはだめだろう。会長からしたら安物になってしまうが、近くの自販機で買ってくるか。
 小さな声で失礼しますと口にして、静かに生徒会室を出た。









 生徒会室周辺は異様に静まり返っている。普段ここを訪れる人はいないからだろう。なんだか世界に俺一人だけになったような気がして、落ち着かない。
 それにしても。誰か一人くらいここに来るかと思ったけど、まさか誰も来ないなんて。風中先輩はどうするつもりなんだろうと考えていたら、今の今まで静かだった空間が急に騒がしくなった。何だなんだと周りを見回すと、遠くに人影が見えた。一人ではない。四、五人はいそうだ。


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