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山下先輩が書類、風中先輩、そして俺へと視線を移す。
「……島田くん、健、どういうこと」
「…泉田の説得を頼んだ」
「は? 何で」
「お前も知ってるだろ、あの生徒会の頑固さ。俺は島田ならやれると思っている」
「だからって…」
何だか知らないが、俺ならやれると思っている先輩。風紀でもない俺に頼んだはそういう理由らしい。でも、なあ…。俺より適任がいるだろうに。
山下先輩は納得がいっていないようで、むすっとして風中先輩を見ている。
「それで、島田。この書類をどう駄目にしたって?」
「あ、はい。えっと、実は生徒会室にゴキブリが出て…」
「は?」
風中先輩は素っ頓狂な声を上げた。山下先輩もぽかんとしている。
「早く殺せと急かされて、思わず近くにあった書類を使ってしまって。無事殺せたんですけど、皺が出来たり汚れたりで…」
俺は問題の書類を差し出す。風中先輩は書類を受け取り、しげしげと見つめる。
「あの、すみません…」
謝罪すると、風中先輩は優しく笑んだ。ぽんぽんと頭を叩かれ、ほっとする。
「島田、書類なら新しいものを用意するから気にしなくていい。しかし、やはり白紙…か」
溜息を吐いて、書類をぐしゃぐしゃにするとゴミ箱に投げ捨てた。そして腕を組むと、静かに俺の名を呼ぶ。
「島田」
「はい」
「改めて頼む。…あいつを、泉田を説得してくれ」
「俺にできるか分かりませんが、出来る限り頑張ります」
俺は握り拳を作って笑って見せた。山下先輩は溜息を、そして風中先輩は嬉しそうに笑った。
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