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 風紀室へ向かい、ドアをノックする。入れと言われ、ドアを開けると手の甲に顎を乗せた風中先輩が俺を迎えた。他の風紀委員の人たちも親しげに挨拶してくる。

「おう、どうだった」
「微妙ですね…」

 会長の怒った顔を思い出し、肩を竦めた。風中先輩が呆れたように溜息を吐く。

「…まあ、すぐに戻るようなら関係ないお前を巻き込まないしな」
「え、なになに、どういうこと?」

 近くでパソコンに向かっていた風紀副委員長の山下先輩がひょこっと顔を覗かせて首を傾げた。ひょろりとした体つきで優男風の先輩は風紀に見えないが、これでも武術に長けているそうで、風中先輩と同じくらい強い。
 風中先輩は面倒臭そうに山下先輩を一瞥する。

「黙って仕事をしていろ」
「無理、気になる。ねえ、島田くん。何か健に頼まれたの?」

 健というのは、風中先輩の名前だ。風中先輩が余計なことは言うなよという視線でこっちを見てくる。どうしようかと考えていると、山下先輩が俺の手元を見て不思議そうに声を上げた。

「それ、何? 皺になってるけど…」
「あ、これは…」

 俺は書類の存在を思い出した。仕方ない、話すしかないだろう。

「実は、俺が駄目にしちゃった書類で…」
「……何?」
「ん? 何の?」

 事情を知らない山下先輩の頭上にはたくさんのクエスチョンマークが浮かんでいるが、風中先輩はすぐに分かってようで、眉を顰める。
 「貸せ」手を差し出してきた先輩に渡す。ゴキブリを潰して汚れたページは外して。

「これは…」
「生徒会のじゃん!」

 書類を覗き込んだ山下先輩が驚きの声を上げる。

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