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「社会に出たらそんなの通用しないんですよ? そんな調子じゃ、見限られるんじゃないんですか」
「テメェ…!」
会長が俺の胸倉を掴む。苦しくて顔を歪めた。外そうとしたが、力が強くて外せない。
「テメェに何がわかる…! あいつは、秀は仕事なんかしなくていいって――」
俺は反射的に会長を睨みつけた。目が合って、動揺した会長が手を放す。一気に空気が入り込んで咳き込む。その間会長は呆然としたように俺を見ていた。
やがて息が整い、俺は会長を見つめて呟く。
「仕事なんかって…本当にそう思っているんですか?」
仕事に誇りはなかったのか。俺は訊ねた。会長は無言で視線を逸らす。動揺が隠しきれていない顔。俺は、会長がずっと会長職を務めてきたということを聞いた。会長は適当にこなせる仕事ではない。誇りはあるだろうし、仕事なんか、なんて思っていないと信じたい。
「…会長」
ぴくりと会長が反応する。俺はできるだけ声を柔らかくし、言葉を続けた。
「後悔する時が、来ると思います。だから、そうなる前に…」
一度言葉を切った。会長は反応しない。俺は苦笑して、皺になった書類に視線を落とした。これ、白紙なのはともかく、俺が駄目にしちゃったしどうにかできないだろうか。風中先輩に訊いてみよう。
「…今日は、帰りますね」
俺は踵を返した。そのまま出ようとすると、背中においと声をかけられた。振り向くと、ぎらぎらとした瞳と目が合った。
「テメェ、名前は」
「島田ですよ」
苗字だけ告げると、俺は今度こそ生徒会室を後にした。
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