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「ど、どこだよ!?」
「なんかそこらへんのゴミ山に…!」
「ゴミ山だと!? ふざけんなこれは俺の私物だ!」

 まじかよ!? いやそんなこと今どうでもいいわ!

「殺虫スプレーないんですか!?」
「ねえよんなもん!」

 会長が青い顔のまま叫んで、俺の方へさささっとやってきた。どうやら会長は虫が駄目らしい。俺もどちらかと言えば無理なんだけど。

「ッチ、早く何とかしやがれ!」
「えええ!?」

 俺がかよ、と口から文句が出そうだったが、これでは話もできないし、とにかく駆除しなければ…。駆除……つーかゴミ邪魔! どこだよゴキブリ!
 ゴミ山をじっと睨む。それにしても後ろで会長がおいまだかと煩い。集中できないから黙っててほしい。
 視界の端で何かが動いた気がした。ハッとして俺は身近にあった紙の束を手に取り、くるっと丸めて振りかぶった。

「あっ、おい! それ俺んだって言っただろーが!」

 床に叩きつけ、音が鳴る。会長が焦ったように叫んで俺の肩を掴んだのはその直後だった。

「……えーっと」

 俺はそっと紙を上に上げる。そこには、ゴキブリの死体と化した姿。紙を広げてみると、皺のできた――何かの書類。俺は口を引き攣らせて笑う。会長は紙を見て目を見開いた。そして見る見るうちに凶悪な顔になっていく。…やべ。

「はは…、じゃ、俺はこの辺で…」

 今日は話はやめておこう。そそくさと退散しようとした俺だが、前に進むことができない。肩に力が込められ、そういえばまだ掴まれていたのだったと顔を引き攣らせた。

「おい…大人しく帰すと思ってんのか…あぁ!?」
「すっすみませんって! これは悪気があったわけじゃ…」

 っていうか、早く殺せってぎゃあぎゃあ騒いでたのお前だろ! あとこのゴミ山もお前のだろ!

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