22

 龍崎が顔を近づけて来る。俺は、目を閉じた。その時初めて、俺は龍崎を受け入れた――。

「ふん…漸く、か」

 唇がそっと離れ、龍崎がぼそりと呟く。その声が何だか冷めているような気がして、俺は不安になった。目を開けると、目に映る龍崎の笑み。俺はほっとして、力を抜いた。そんな俺の体を引き寄せ、龍崎が笑った。




















 目を開ける。日が窓から差し込んできていて、朝が来たのだと知る。体を起こす。少し頭が痛かったが、すぐにそれは消えていった。
 首を動かして部屋の中を見る。龍崎はいない。その代り、俺の腕には鉄の塊が付いていた。俺はそれを触って、小さく笑む。これが龍崎の執着の塊のように感じた。

「龍崎さん、いるー?」

 その時、のんびりとして明るい声がした。須藤だ。俺は少し迷って、答えた。「今は…いない、です」

「ああ、武山くん。龍崎さんいないの? …んー、ま、いっか。入るよ」

 俺の返事を待たずに、須藤が襖を開ける。須藤はにこにこしながら部屋に入ってきた。

「武山くん、おはよう。どう、龍崎さんの部屋は」

 「居心地いいでしょ」と笑う須藤。俺は小さく頷いた。

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