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 ところで、俺はいつまでここにいればいいんだろう。確かに居心地はいいが、ここにずっといいたらあそこに戻りたくなくなってしまう。折角慣れたのに。

「あの…俺はいつ戻れば?」

 おずおずと訊ねた俺に、龍崎が訝しげな目を向ける。

「何言ってんだテメェ」
「え?」

 何言ってんだと言われても。いいところに連れてってやると言われただけで、その後のことはなにも聞いていない。だから分かるわけがない。俺は聡くないのだから。
 龍崎は何も答えない俺を見て溜息を吐いた。

「テメェの部屋は今日からここだ」
「へ……ええ!?」

 なんだって!?
 ぎょっと目を見開く。それに気をよくしたのか、ふ、と笑みを浮かべる龍崎。

「いちいち面倒だからな。――それに」

 龍崎の瞳がぎらりと光る。銀の髪を風で揺らす。そして、鬱陶しそうに髪を掻き上げた。その一連の流れが映画のワンシーンのようで、とても美しかった。目を奪われる。

「ここなら、逃げられねえだろ?」

 執着の見える言葉と顔に、どきりと胸が高鳴る。俺はいつだって邪魔者扱いだった。母親しか俺のことを見てくれなかった。
 しかし龍崎は俺のことを見てくれている。俺を必要としてくれている。
 かっと顔が熱くなった。心臓が煩い。

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