▼ 19
びくっと体が震える。現実へと戻された俺は、天井を見つめる。
「起きたか」
声のした方に視線を向けると、龍崎が煙草を咥えたまま俺を見ていた。眼鏡をかけ、書類のようなものを持っている。見慣れないその姿に眠気が吹き飛ぶ。仕事中だろうか。視線が合うと、龍崎は眉を顰めた。訝しげなその顔で書類を机に置くと、俺に手を伸ばす。目の前にやってきたときに反射的に目を瞑ると、ぐい、と目の下を擦られた。
「なんで泣いてんだよ、テメェは」
「えっ…」
泣いている? 俺が?
目を見開く。確かにそう言われれば目が湿っているような気がする。しかし泣いているというか、涙目と言ってほしい。
「嫌な夢でも見たかよ?」
すっかり見慣れた馬鹿にした笑みで問いかけて来る。そして先程のことを思い出し、胸が苦しくなった。じわりと涙が出て来る。龍崎は今度は呆れた顔をして、溜息を吐いた。
「おいおい、テメェ俺より年上なくせしてガキみたいに何度も泣くなよ」
涙が引っ込んだ。待て。誰が誰より年上だって?
唖然として龍崎を見上げる。――ウソだろ? 俺よりだいぶ上だと思っていたのに。
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