19

 びくっと体が震える。現実へと戻された俺は、天井を見つめる。

「起きたか」

 声のした方に視線を向けると、龍崎が煙草を咥えたまま俺を見ていた。眼鏡をかけ、書類のようなものを持っている。見慣れないその姿に眠気が吹き飛ぶ。仕事中だろうか。視線が合うと、龍崎は眉を顰めた。訝しげなその顔で書類を机に置くと、俺に手を伸ばす。目の前にやってきたときに反射的に目を瞑ると、ぐい、と目の下を擦られた。

「なんで泣いてんだよ、テメェは」
「えっ…」

 泣いている? 俺が?
 目を見開く。確かにそう言われれば目が湿っているような気がする。しかし泣いているというか、涙目と言ってほしい。

「嫌な夢でも見たかよ?」

 すっかり見慣れた馬鹿にした笑みで問いかけて来る。そして先程のことを思い出し、胸が苦しくなった。じわりと涙が出て来る。龍崎は今度は呆れた顔をして、溜息を吐いた。

「おいおい、テメェ俺より年上なくせしてガキみたいに何度も泣くなよ」

 涙が引っ込んだ。待て。誰が誰より年上だって?
 唖然として龍崎を見上げる。――ウソだろ? 俺よりだいぶ上だと思っていたのに。

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