15

 強制的に立たせられたため、上手く立てず、龍崎に抱き付く形になってしまった。血の気が引いて慌てて離れようとしたが、腰に手が回り、逆に抱き締められてしまった。今度は顔に熱が集まる。

「青くなったり赤くなったり、忙しい野郎だな」

 くく、と龍崎が笑う。俺は無言で俯いた。早く放してほしい。俺の心臓の音が、聞こえていないかとても不安だ。

「立てねえっつうなら、抱えてやってもいいが?」
「い、いやっ…それは」

 俺は首を振る。そしてしっかりと足で立つと、するりと龍崎の腕が離れて行った。龍崎が舌を打つ。

「ッチ、つまんねえ」

 もうからかわれているのか、本気で言っているのか、分からない。俺は顔を赤くしたまま、小さく溜息を吐いた。













 思えば、すっかり俺の部屋と化したあの牢獄以外の部屋は、初めて見る。ここへ連れて来られた時は意識がなかったし、羽取と逃げた時は地下通路だったから。俺はきょろきょろと周りを見回した。自然と歩みが遅くなっていたのか、龍崎に早くしろと怒られる。
 そんな龍崎は、色々な人から声をかけられていた。流石というか、なんというか。どうみても危ない人種の奴らがへこへこと頭を下げている光景は、なんだか異様だった。こんなのテレビとかでしか観たことがない非現実的なものだった。

「おい、こっちだ」

 少し苛立ったような声に、はっとする。龍崎との距離が開いていたことに気付き、早足で近寄った。がっと頭を殴られ、痛みに顔を歪める。そんな俺を鼻で笑い、足を進めた。俺は頭を押さえて後を追った。

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