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 龍崎は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をして、視線を逸らした。

「ペットを可愛がるのは飼い主の役目だろ」

 ……え、俺ペットだったの?
 初耳だった。俺のことは壊れない玩具のように扱っていると思っていたから、生き物としては扱ってくれているということに驚いた。嬉しいかと言われれば微妙だが、マシではあるだろう。
 それにしても、ペットなのはいいとして、もっと別の可愛がり方はないのか。キスされても俺は嬉しくないし可愛がってもらっている行為だとは信じたくないんだけど。何か別の方法を考えて欲しい。いくら龍崎が美形だとは言え、男に違いはない。
 不満そうな顔をしてしまっていたのか、龍崎がぎろりと俺を睨む。

「なんか文句でもあんのか、テメェ」

 俺はひくりと顔を引き攣らせて首を振った。この男を前にしてはっきりと意見できる奴なんているのか。そう考えたところで、パッと頭にある男の顔が浮かぶ。狐目の、飄々とs多男。……はっきりと意見できる奴、須藤がいたな。

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