6

 久しぶりに見たからか、龍崎の睨みは恐ろしかった。みっともなく体を震わせると、龍崎は俺を嘲笑うかのように口を歪めた。
 ――駄目だ、逃げられない。俺は唇を噛んだ。逃げられないのであれば、今ここで大人しく捕まった方がマシだ。一度羽取に目を向ける。青ざめた顔で、じっと前を見据えている。覚悟はできている、ということか。俺には目もくれないのが少し寂しく思えた。
 龍崎に視線を戻す。一歩足を踏み出す。鉛のように重い。実際にはいつもと変わらないのだが、気持ちだけでこんなにも違うように感じる。
 近くまでくると、力強く引き寄せられ、拘束された。一瞬だけ、これは羽取にどう見えているのだろうと場違いなことを考えた。

「――羽取」
「……はい」
「最期に、言いてえことでもあるか」

 狼が残虐に笑う。羽取は力なく首を振った。――目の前で羽取が…人が、殺されてしまう。俺のせいで。
 龍崎が銃を構える。羽取は無表情だった。須藤は詰まらなそうにしていた。龍崎は、笑っていた。龍崎の指に力が入った瞬間、俺は銃口を握って上を向かせた。
 相変わらず音は鳴らない。しかし、引き裂かれるような痛み。ぽっかりと空いた穴から赤い血が流れていた。銃の弾が、俺の手を貫通していたのだ。がくがくと手が震える。

「ああああああああっ!」

 痛い。
 龍崎が目を見開く。

「何やってんだテメェ」

 龍崎にしては珍しく、呆然とした声だった。



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