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「鬼ごっことかくれんぼは楽しかった?」

 須藤はくすりと笑って近付いてくる。視線は俺の手首に向いている。やはり手首のこれは――須藤が仕向けたのか?

「まさか、テメェがこの俺を裏切るなんてなあ…羽取」

 龍崎はそこで漸く羽取に視線を向けた。じっと羽取を見つめるその視線から感情は読み取れない。何を考えているのか分からない、整いすぎた顔は、逆に恐怖を感じさせられる。

「…どうして、ここが」

 羽取は相変わらず、絞り出したような声だ。今の言葉から察するに、羽取はここがバレない自信があったということか。
 須藤が鼻で笑う。

「羽取くんって意外に抜けてるよねえ」
「……え?」
「武山くんの手首のそれ。GPS機能つきなんだよね」

 俺と羽取は同時に目を見張る。ずしりと重たいこれに、そんな機能がついていたなんて。これを付けていたら羽取は俺が見えるから、須藤はこれを外さないということを確信していたようだ。

「まあ、でも。これって保険だったんだけど」

 須藤は肩を竦めた。「まさか武山くんが逃げるなんてねえ」須藤はちらりと龍崎を一瞥する。

「ふん」

 龍崎は鼻で笑う。そしてぎろりと俺たち――いや、俺を睨んだ。

「テメェ、いつまでそうしてるつもりだ。来い」





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