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 嫌な予感というものは、当たってしまうものだ。小屋で一息吐いたという時、いきなり大きな音が鳴った。何事かと思っている内に、小屋のドアが開く。月の光に照らされ、姿を現したのは――赤く染まった獣だった。銀の髪がキラキラと光り、綺麗だと一瞬見惚れてしまう。

「……若」

 今にも死にそうな、掠れた声だった。俺は、はっとして羽取に目を向ける。暗いせいもあるかもしれないが、異様に顔が青白い。本当に死にそうな顔だった。――いや、今から死ぬのか。龍崎に、殺されるのか。
 心臓が痛いほど胸を打つ。龍崎は形の良い唇をくっと歪める。ぎらりと瞳が俺に向いた。

「よお、久しぶりだな死にぞこない」

 一歩、こっちへと近づいた。近くにいる羽取の体が強張る。しかしそんな羽取には目もくれず、俺だけを射抜く獣のような男。血で塗られた服はすでにどす黒い赤になっている。

「やっほお、俺もいるよ」

 龍崎の後ろから顔を出したのは、シリアスな空気を払拭する明るい声の持ち主、須藤。細めた目とにんまりとした口でこっちを見ている。

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