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しかしそんな俺の心情を見透かしたように、羽取の手に力が籠められる。振り払えそうな気はするが、自信はない。とりあえず、今は大人しくしていることにしよう。不意を突けそうな時、我武者羅に走って逃げればいい。どんなに無様でも、目撃者はいない。
それに、確実に逃げられる時ではないと、もしかしたら羽取ではなく龍崎達に捕まるかもしれない。最悪なパターンだ。
「武山くん、ここに座ってくれ」
羽取がくいっと手を下に引っ張る。考え事をしていた俺は、なすがままにその場に座り込んだ。柔らかい感触が俺の体を包み込む。暗闇に目が慣れてきた。俺が今座っているのはソファのようだ。埃っぽくはない。良く使うのか、それとも掃除する人がいるのか。まあ、それはどうでもいいことだ。羽取が隣に腰掛ける。体が傾きそうになるのを抑えた。
「…きみ、煙草は嫌いじゃないか? 大丈夫なら、手を挙げてくれ」
俺は目を瞬かせる。煙草?
「まあ、別に…」
小さく答えて、手を挙げる。羽取は少し口を緩めると、ポケットの中から何かを取り出す。ライターと煙草の箱だった。慣れた手つきで火を点けると、それを咥えた。
驚いた。羽取は喫煙者なのか。潔癖で生真面目なイメージがあったから、煙草は吸わないと思っていた。ゆらゆらと上がる煙を眺める。羽取はリラックスしている様子だった。
――何故、そんなにリラックスしているんだ? 俺のこの妙な不安は、なんだろう。
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