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「俺結構猫っぽいと思うんだけどなあ。ねえ、龍崎さん?」

 ふん、と龍崎は鼻で笑う。須藤は肩を竦めると、俺の顔に手を這わせる。

「きみが俺たちに見えるのは、そういうことだと思うんだよね。俺たちの共通点ってそれくらいしかないから」

 なるほど。人間から逸脱した存在だから、俺のことが見えるのか。だから羽取や、他の人には見えなかったのか。
 あと、須藤と龍崎の関係…というか、須藤の龍崎へ対する態度が馴れ馴れしいのも、少し納得した。須藤が化け猫でなければ、羽取のようだったかもしれない。

「それにしても、きみ、そういう体になってから俺たちみたいな人間じゃない奴と会わなかったんだね」

 するりと顎に滑る手。ひんやりとしたそれにぴくりと反応すると、須藤は楽しそうに笑った。薄い唇が開いた時、凛とした声が響いた。

「――若、お時間です」
「ッチ、もうんな時間か」

 羽取が恭しく頭を垂れる。龍崎は舌打ちをすると、俺を一瞥して踵を返す。羽取はこっちを見つめているが、視線は合わない。これからも合うことはない。

「いってらっしゃあい」

 須藤は俺から手を放してゆらゆらと手を振る。龍崎は振り返ることなく、また、何も言わず去って行った。



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