16

 数日が経過した。そろそろ外の空気が吸いたくなった俺だが、相変わらず牢に閉じ込められていた。床のひんやりとした感触に目を細めていると、上から大量の水が降ってきた。――俺の目覚まし代わりでもあるこれは、今のところ毎日成されている。

「おはよお」

 今日は須藤かと視線を上げる。楽しそうに笑う彼は、相変わらず目が細い。いつも笑っているから、余計にそう見えるのだ。
 昨日は龍崎だった。龍崎は短気で暴力的だが須藤は無邪気に暴力をふるってくるため、俺としては須藤の方が怖い。飽きてくれるのを待つのみだ。
 須藤は目の前でしゃがみ、俺の服をぺろりと捲ると落胆の声を上げた。

「あーあ、もう跡形もないじゃん。つまんねーの!」

 須藤は昨日、俺の腹全体が青紫になるまで蹴り続けた。その時は激痛だったのだが、少し時間が経つとやはり痛みが薄れ、一晩経つともう跡形もなくなってしまったのだ。

「でも、また付ければいっかあ」

 にこにこと笑う須藤は腹をするりと撫でる。冷たい指の先の不快感で、ひ、と引き攣った声が出た。

「武山くんはさあ、自分のことどう思ってんの?」

 ぐいっと髪を引っ張って持ち上げられ、痛みで顔を歪める。「答えてよ、はやく」ぐいぐいと髪を引っ張るその顔は笑顔だが、細い目はぎろりと俺を睨んでいる。

「わ、わからな……」
「あ、そう」

 自分から訊いた癖に、全く興味がなさそうだった。

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