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 須藤は馬鹿にしたように笑った。しかし、すぐに首を傾げる。

「…あのさ、ちょっと電気点けていい?」
「勝手に点けろ」
「はーい」

 須藤は立ち上がると、闇に消えていく。そして、パッと明かりが点いた。いきなり目に入り込んだ眩い光にぎゅっと目を閉じる。頭上で須藤が納得したように声を上げた。

「ああ…なるほどねえ。だから羽取くんには見えなかったわけだ。きみ、人間じゃないよね」

 糸目がじっとこっちを見る。感情の読めないそれが恐ろしく感じた。目で返事を促されるが、俺は自分では人間じゃないと口にしたくなかった。頷きたくもない。そうしたら、俺に何かが崩れ落ちそうな気がする。

「……ていうか、血の匂いすると思ったら、きみのだったんだね」

 須藤がくすりと笑う。そして小さく呟いた。「面白そうだなあ」糸目は更に細くなっていて、口は愉快そうに歪んでいた。

「こんだけ血がでてるのに、あんまり痛そうじゃないね」

 そこで、そっぽを向いていた龍崎が視線をこちらへ遣る。

「――……もう治ってんのか」
「龍崎さん何やったの?」
「腕折った」

 須藤は目を少しだけ大きく開いた。

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