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 俺も自身の脚を見て、あれと思う。そういえば、撃たれたというのに、痛みがない。すっかり傷口が塞がっていて、血が少しこびり付いているだけであった。傷の治りが早いということは気づいていた。しかし酷い怪我ではなかったし、対して気にしたことはない。あれからどれほどの時間が経ったのか知らないが、確実に傷が塞がる時間は立っていない。怪我をしてもすぐに治るということは、致命傷を与えるか心臓乃至頭を撃ち抜く、更には首を掻っ切るくらいのことをしないと死ねないということか。それとも、それでさえも生き残ってしまうのか。分からない。

「なるほど、悪くねえ」

 思考の渦から抜け出す。俺は龍崎へと視線を戻す。悪くない――とは一体何だろう。

「どうやらテメェも自分の治癒力について知らなかったようだな」

 ん? と返事を求められて、俺は怖々と頷いた。空気が重たい。電気は点かないのだろうか。

「そうかそうか、じゃあな武山、テメェは腕を切り落としたらどうなると思う」

 龍崎は俺の腕を手に取った。ひ、と悲鳴めいた声がでる。ぞっとするような美しい銀の獣が目に入る。

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