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 撃たれたことが分かったのは、銃声ではなかった。銃と言えば耳を塞ぎたくなるような鋭い音だが、龍崎の持つ黒いそれは無音で弾を飛ばしてきた。今まで感じたことがないほどの激痛と黒い塊と天に昇る煙で、ああ撃たれたのだと理解した。俺はその場に倒れる。脚が痛い。どくどくと心臓の場所が移動したようだった。俺は流れる赤い血を見て、生きている、と自分の生存を確認した。

「ああ、わりぃな。痛かったか?」

 悪魔のような顔、上がった口から優しい声が出る。甘い囁きは俺の恐怖を増大した。

「逃げられちゃ困るんでな。……」

 龍崎は俺の傍に来ると、しゃがんで血溜まりに手を伸ばした。何をするのかと思えば、人差し指に血を付け、口元へ持っていった。ぺろりと舐めると、吟味するように血を眺めたまま黙る。

「……ほお」

 龍崎はぎらりとした歯を見せ笑った。色々限界だったため、目からぽろりと涙が零れる。龍崎の目は興奮によるものか、少し充血していて、熱を帯びていた。

「――若」

 先程の男――羽取が龍崎の背に立つ。龍崎はぎらぎらとした目を俺から外すと立ち上がる。

「調べたか」
「はい、……若、武山一樹は今そちらに?」

 羽取が鮮血を見て眉間に皺を寄せる。鮮やかさを失う中にある不自然な赤。俺の血だ。
 耳打ちしようとした羽取を手で制し、俺を見下ろしながらそのまま話すよう促した。

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