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「前みたいに、家にいることが苦痛じゃない」
「じゃあ、家に戻るんだな?」
俺の言葉に素直に頷く。それにほっとすると同時に、寂しかった。なんだかんだで結構な時間一緒にいたからな。なんだか胸にぽっかりと穴があいたような…。もう会えなくなるわけじゃないのに。
礼二が突然立ち上がって、俺は目を丸くする。
「え、もしかして…今から帰るのか?」
「うん」
てっきり今日まではいると思っていたから、戸惑いを隠せない。「別にもっとゆっくりしからでもいいんだぞ」俺の口が勝手に動きそう言うが、礼二は首を振った。
「春樹と、もっと、話す」
「……ふーん」
さっき――といっても結構時間が経っているが――まで春樹くんと話したくない、って感じだったのに。何だその変わりようは。俺より春樹くんを優先するのか。――そう考えて、はっとする。なんてこと考えているんだ俺は。家族を優先するのは当たり前だろ。
俺が頭を抱えていると、大きな手が俺の頭を撫でた。
「隆、嫉妬?」
「しっ!? ば、馬鹿か誰が嫉妬なんて…!」
ばっと顔を上げると、礼二が甘ったるい顔で俺を見下ろしていた。顔に熱が集まる。きっと、真っ赤なんだろうなと思った。
「可愛い」
目が腐ってるとしか思えない。こんな俺より敦くんのような人に言うべきだ。……いや、敦くんも可愛い顔をしているが男だから言うべきではないか。
「俺のこと、好き?」
「それは…」
俺は視線をうろうろさせる。「…分かんねえ」正直な気持ちを口にした。
「好きではある。でもそれが恋愛感情かと言われると、…まだはっきりとは分からない」
「分かった」
礼二はふわりと笑うと、荷物を手に取る。そしてお邪魔しましたと礼儀正しく言って、この部屋から出て行った。
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