25

 腹も一杯になり、食器を洗い終わった俺は、礼二の向かいに腰を落とす。じっと促すように礼二を見遣ると、礼二は小さく頷いた。

「帰ったら、あいつらがいた。でも、おれのこと、ちらっと見ただけだった」

 うん、と相槌を打つ。礼二は目を細める。あ、笑った。

「そのあと春樹に会った。おれのこと、心配してたって、怒ってた」
「そうか」

 怒られている礼二を想像してくすりと笑う。礼二は柔らかい表情のまま、言葉を続ける。

「話したいって言ったら、驚いてた。で、嬉しそう、だった」
「春樹くん、お前と話したかったって?」
「うん、言ってた」

 嬉しそうな顔に、俺も頬が緩む。良かったな、礼二。

「たくさん話した。いろんなこと」そう言うと、礼二は立ち上がって俺の前にやってきた。

「どうした?」
「隆の、おかげ」

 ぎゅっと俺を抱きしめられる。甘ったるい声にどきりとする。

「ありがと」
「…お、おう」

 って言っても、俺はなにもしてないんだけど。礼を言うなら敦くんにだろう。


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