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 礼二を叩き起こそうとして手を上げるが、直前でぴたっと止まる。こいつを起こして……俺は、一体どうすればいい? どんな顔をしたらいいんだ。俺は初めてキスをした時のことを思い出した。あの時も、どういう顔をしたらいいか分からなかったな…。恥ずかしくて、気まずくて。俺は溜息を吐いて、腹減ったなあ、と思った。
 数分後、体制がきつくてもぞもぞしていると、ぴく、と俺を抱き締めている体が反応した。そして頭上で寝起きの掠れた声が聞こえた。

「隆…」


 ちょうど耳のあたりだった。息がかかって、ぞわりとした。不快とかじゃなくて、なんだ、えっと…。とにかく、こいつ色っぽい!
 そろそろと顔を上げると、目が合った。眠たそうなとろんとした目と少し開いた口。ドキッと心臓が高鳴る。

「たかし」
「な、なんだよ」
「おれ、頑張った」

 へにゃ、と笑うもんだから、ぎゅっと心臓を鷲掴みされたような気分になった。俺も笑みを浮かべて、礼二の背中に腕を回して、ぽんぽんと背中を叩く。

「良く頑張ったな、礼二」
「うん」


 二人でにこにこ和やかムードになった瞬間だった。礼二の顔が近づいてきて、ちゅ、と唇が重なった。

「お、おま、おまえ」

 かっと顔が赤くなる。

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