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「だって、敦は、同情で…」
「そんなわけあるか!」
思わず語気を強めて言うと、腕の中の礼二がびくりと震えた。俺は礼二を頼みますと言った敦くんの顔を思い出す。同情なんかじゃない。敦くんは、本当に礼二のことを心配していた。あれは演技なんかじゃない、と俺は思うのだ。
「なあ、春樹くんとちゃんと話し合ってみろよ」
体を離して、礼二の両頬を手で包む。礼二は眉を下げ、困惑したような顔で俺を見る。背中を優しく叩きながら笑みを浮かべた。
「でも、おれ」
「でもじゃない。お前は両親に認められようと頑張ったかもしれないけど、春樹くんには何もアクション起こしてないだろ。どうなんだ?」
首を傾げると、小さく頷く礼二。俺は、そうだろ、と苦笑する。
「大丈夫。俺がいるだろ」
言ってから、少し照れる。こんな言葉で礼二が動くかは分からないが。礼二は目を丸くして、数回瞬いた。
「じゃあ。おれが、頑張ったら。……ここに、戻ってきて、いい?」
「おう。いいよ」
……いや、いいのか?
俺は礼二から視線を外して、ん? と首を傾げる。また居座りそうな気がするぞ。しかし、ぱあっと顔を輝かせた礼二に、やっぱり来るななんて言えるわけがない。
「隆」
「ん?」
呼びかけられて視線を戻す。がつ、と何かが当たった。いてえ、と思っていると、唇に柔らかいものが触れた。
「おれ、頑張る」
にっこりとそれはそれは良い顔で笑った礼二は、立ち上がってびゅんと部屋を出て行った。俺は呆然とそれを見送る。
「え?」
あれ? 今のって……え?
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