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「隆さん」
「ん?」
「あいつを…礼二を、お願いします」
「え? お、俺?」
目を瞬かせると、敦くんは頷いた。そして、柔らかな笑みを浮かべる。それはとても綺麗で、俺は思わず見惚れた。
「礼二は、隆さんに懐いています。俺や春樹の話は聞こうともしませんが、隆さんの話なら聞いてくれるはずです」
「え、ええ…? そうかな…」
いまいち自信がなくてそう言えば、何故か自信たっぷりな様子で頷く敦くん。どこからその自信は湧いてくるんだ。
「そうですよ」
「分かった。とりあえず、あいつとちゃんと話してみるよ」
「隆さん…ありがとうございます」
照れ臭いな。俺は、はは、と笑って首を掻く。
敦くんは立ち上がって、俺に笑いかける。太陽のような笑顔だなと思った。
最後にお願いしますと礼をした敦くんと別れた俺。礼二の場所はなんとなく分かっていた。
自分の家の前で蹲る黒い物体に笑みが零れる。
「礼二」
静かに声をかける。少し小さかったかなと思ったが、しっかり届いたようだ。黒い物体がびくりと震える。
「やっぱり、戻ってきてたんだな」
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