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「礼二は…ある日、放り出されたんです」
「えっ? い、家から?」
「いえ、そうじゃなくて…。…子どもが、できたんです。だから、礼二は用済みで…」

 俺は息をのんだ。自分たちの本当の子ができたからと言って、そんな…。
 敦くんは静かに続けた。

「その時礼二はまだ小学生になったばっかりでした。いきなり自分に関心がなくなって、わけがわからなかったでしょうね。そんな礼二に、あの人たちは言ったんですよ」

 ――お前は私たちの子どもじゃない、ってね。
 俺は敦くんから視線を外して公園の入り口を見る。どんな気持ちだったんだろう。きっと、すごく傷ついたんだろうな…。胸が苦しくなって、礼二の両親に対して怒りが湧いて、俺は顔を顰めた。

「敦くんは…礼二と長い付き合いなのか?」
「はい。礼二って、昔から体が大きくて、虐められてた俺の傍にいてくれたんです。それなのに俺は……、俺は近くにいたのに何もできなかった。春樹も…」
「春樹?」

 初めて出てきた名前に首を傾げると敦くんが、ああ、と苦笑する。

「礼二の弟です。春樹は礼二のこと本当の兄のように慕っているんですけどね。肝心の礼二があの調子なので碌に話もしていません」

 良かった。あいつの味方が、ちゃんといるんだ。

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