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「そうだけど…」
頷くと、男は眉をハの字にして、頭を下げた。
「すみません、礼二の馬鹿が迷惑を…」
「いや……。えっと、君は?」
「あ、すみません、名前も言わずに。俺、礼二の友達の結城敦って言います」
意外に性格は男らしいようで、この礼儀正しい態度も好感が持てる。それに比べてこいつは…。と礼二に視線を遣ると、何だかむすっとしていた。溜息が聞こえて視線を戻すと、敦くんが呆れた顔をして礼二を見下ろしている。
「礼二、帰るぞ」
礼二は無言で首を振る。「礼二!」敦くんは強い口調で名を呼び礼二を睨みつける。しかし知らんぷりだ。
「帰りたくないのは、分かるけど。このままずっと隆さんの家に居座るわけにはいかないだろ」
俺の名前が出た瞬間、礼二は勢いよく立ち上がる。俺はびっくりして礼二を見上げた。
「おれは、帰らない!」
そう叫ぶと、いきなり走り出した。俺は立ち上がって、おい、と口にする。追いかけようとした俺を止めたのは、敦くんだった。
「あいつのことは放っておいていいです。それで、あの…ちょっと話したいんですけど、いいですか」
控えめにそう言った敦くんに頷く。
「あ、座ってください」
「ありがとう」
遠慮なく座らせてもらって、俺も隣を指差す。「敦くんも」敦くんは笑って、失礼しますと言った。
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