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そんなこと言ったらずっと居座り続けそうだから言わないけど。

「おい、礼二、次どっちだっけ」

 振り返って訊ねると、礼二は無言で人差し指で右を指す。俺礼二の指示に従って公園まで歩き続けた。















 数分後。俺たちは公園に着いた。記憶にあるとおり、人気はなく、どこか寂しい雰囲気の公園だ。俺の背中にへばり付いていた礼二は、俺から離れてベンチへと歩き出す。俺はゆっくりついて行く。
 礼二の隣に腰掛けると、ちょこんと頭を俺の肩にのせてきた。これが可愛い女の子だったらどれだけいいか。ていうか礼二の方が体がデカいんだから、俺も重いし礼二も体制がきつそうだ。

「…隆」
「ん?」

 この野郎また呼び捨てにしやがって。内心そう思いながら、何だと返す。

「おれ……」

 小さな声でぽつりと言った。「迷惑?」
 俺ははっとして礼二の顔を見遣る。今にも泣きそうで、辛そうな顔だった。今、何を考えているんだ? 俺のこと? それとも、家族――?
 なんだか、迷惑だと言ってしまうと、いけない気がする。俺の直感がそう言っていた。俺は恐る恐る首を振る。ほっとすると思っていたが、礼二はその表情のまま俯く。俺は、何か言おうと口を開いて――結局、言葉は出てこなくて、口を閉じた。

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