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「…外ではべたべたするなよ」
「! うん!」
こくこくと頷くその顔は餌を与えた犬のようで、俺は思わず笑みを零した。なんだかんだで、こいつに絆されているなあ、と思った。
「お前、どっか行きたいとこある?」
目的もなく家を出たはいいが、会話もなくただ横に並んで歩くのはつまらないので、礼二に訊ねてみた。礼二は考えるように視線を漂わせて、俺を見下ろした。
「……公園」
「公園? どこの?」
「南橋の近くの…えっと、本屋さんの近く…」
「ああ、はいはい。あそこね」
頭の中に風景を思い浮かべて、頷く。公園に入ったことはないが、通りがかったことはある。小ぢんまりとして、あまり人がいなかったような気がする。
「なんで公園?」
「…おれ、よく行く」
ふうん、と相槌を打つ。礼二の顔は暗い。もしかしたら、家に帰りたくないときは公園にいるのかもしれない。確証はないが、なんとなくそんな気がした。
「オーケイ、分かった。公園な」
「いいの…?」
「ああ」
不安そうな礼二に笑いかけると、ほっとしたように顔を緩ませる。甘ったるいその顔に少し気恥ずかしくなりながら、俺は足を踏み出した。
後ろからちょこちょこ追いかけて来るのが面白くて速度をあげると、焦ったように服を掴んでくる。懐かれているな、と思う。少し面倒な奴だが、好かれて嫌なわけがない。早く帰ってほしいと思っているのに、心の隅で、もう少しいてほしいという気持ちも、存在しているかもしれないな。
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