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「あ、おかえり」
軽い睡眠をとり、今日の復習をしていた時、礼二が帰って来た。俺は座ったままじろじろと礼二を見る。へえ、制服を着てたら高校生に見えるな。デカイけど。
「ん、あれ? その制服…」
そういえば、出て行く時は私服だったけど、制服はどうやって入手したんだ? まさか家に取りに行ったのか? 目を瞬かせると、礼二はぽつりと言った。
「借りた」
「へえ」
やっぱり家に帰ってはないわけね。誰から借りたのかなど、諸々のことは興味がないので適当に相槌を打った。
で、本題。
「じゃ、荷物持って帰ってくれる?」
「やだ」
やだじゃねえよ!
「一晩だけっつっただろ!」
「もう一晩」
「駄目だ!」
それもう一晩もう一晩って長引いていくだろ絶対! きっぱりと断ると、礼二の眉はしゅんと下がった。あるはずのない耳が……って、デジャブを感じるぞこれ。
「おれ、隆と一緒にいたい」
女性が言われたらくらっときそうな言葉と声だったが、俺は男だ。ていうかこいつ俺のこと呼び捨てしやがった。敬語も使わねえし!
「駄目」
「おねがい」
「駄目」
顔を見ると絆されそうになるので、そっぽを向いて拒否し続けると、鼻を啜る音がした。まさかと視線を遣って、ぎょっとした。うるうると瞳を潤ませて、今にも泣きだしそうだった。
「な、泣くなよ」
「だって」
「わ、分かった。一晩、あと一晩だけな」
あ。
「うん!」
あ。
ぱあっと顔を輝かせる礼二。涙なんて出ていない。騙された、と思いながら俺は肩を落とした。
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