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 ――って、高校生なら、親が心配しているのではないだろうか。時計を見ると、時刻は19時を指していた。

「家に連絡とか…しなくて大丈夫?」

 俺はスマホの充電がなくなっていたことを思い出して、充電器に繋げる。顔を上げた時には、男はむっと顔を顰めていた。

「…嫌だ」
「は?」
「帰らない、あんな家」

 えっもしかして家出? ていうか帰らないとか言われても困るんだけど。

「…じゃあ、どうするんだよ」

 俺の言葉に、じっと縋るような目を向けて来る男。あの、非常に嫌な予感がするんですけど…。

「ここに…」
「帰れ」

 遮ってスパッと言い放つと、ガーンという効果音がつきそうな顔をされた。

「どんな事情があるのかは知らないけど、家に帰った方がいいと思う、俺は。……ほら、学校だってあるだろ」
「…やだ」

 やだって。おい。ガキか。頬を引き攣らせる俺を視界に入れず、つーんとする男。殴りたい衝動に駆られた。いや落ち着くんだ冷静になれ俺。なんとか説得して追い出そう。

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