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 風呂からあがってきた男の顔色が良くなっていたことに安心したが、視線を体に遣って――ああやっぱりと肩を落とした。

「…きつくないですか」

 明らかにサイズが合っていない。同じ男として悲しくなると同時に申し訳なく思い、俺は眉を下げる。男はふるふると首を振り、目を細めた。

「…ありがと」

 笑ったのだと瞬時に理解した。破壊力のあるそれに心臓がドキリと音を立てた。イケメンの笑顔、やべえな。

「お、俺も入ってきますね」

 俺はちょっと赤くなった顔を見られないように隠して立ち上がると、早足で風呂場へ向かった。










 ああ、すっきりした。首にタオルをかけて戻ってくると、男がちょこんと体操座りをしているのが目に入った。ドアの音で気がついたのか、こっちをじっと見つめて来る。何だか主人の帰りを待っている犬みたいだな、と思った。
 男は俺の傍までやってきて、きょろきょろと周囲を見回した。

「…家族、は?」
「ああ、俺一人暮らしなんですよ」

 行きたい大学が結構離れていたので、部屋を借りたのだ。
 そういえば、この男は幾つなんだろう。見たところ俺と同じか年上に見えるけど。気になって、訊ねてみると驚愕の答えが返ってきた。

「十七…」
「十七!?」

 目を見開いて大声を出した俺に驚いたのか、びくりと反応する体。小さくこくこくと頷く男をじろじろと見るが、十七には見えない。

「まじかよ…」

 がっくりと肩を落とすと、頭を撫でられた。……やめてくれ。男を恨みがましく睨むと、きょとんと不思議そうな顔をされた。

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