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 男はあまり喋る人ではないらしく、部屋は静まり返っていて些か居心地が悪かった。男をちらりと見ると、何を考えているのか分からない顔でじっとタオルを見ていた。…とりあえず拭けよ。俺は自分用に持ってきたタオルでガシガシと頭を拭く。
 部屋も温かくなり、風呂も沸いたという時になってはたと気づく。男が着られる服って、俺持っていたか? 悔しいが体格が違うし恐らく俺より身長もあるから服入るか微妙だ。
 俺は立ち上がってクローゼットを漁る。確か、萌え袖に憧れて少し大きめの服を買ってたはずだ。見つかるのに時間はさしてかからず、俺は服一式を渡す。

「あの、風呂入ってください」

 男は瞳を揺らした後、小さく頷いた。そして立ち上がって――俺はひくりと口を引き攣らせた。デカイな、やっぱり…。

「……身長、いくつですか」
「……ひゃく、はちじゅう……くらい」

 百八十!? いやもっとあるだろ!? 俺は引き攣った顔のまま、そうですかと返して風呂場を指す。

「あっちが風呂です。なにか分からないことがあったら呼んでください」

 こくりと頷く。そして俺の服をぎゅっと胸に抱えてのそりのそりと動き出す。……熊だ。俺は背中を見ながら、そう思った。




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