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「大丈夫ですか?」

 俺はタオルとティッシュを渡す。きょとんと目を瞬かせた男に続けてこう言った。「もうすぐ風呂が沸くので、そしたら入ってくださいね」
 男には警戒心はあれど敵意はないと分かったので、通報するのはやめとこう。

「…あの?」

 何故かタオルもティッシュも受け取らずに俺を凝視している男。イケメンに見つめられると緊張するんだけど。そんなことを考えながら控えめに声をかける。男は戸惑ったような顔をして、俺とタオル、ティッシュを交互に見る。

「なんで…」
「なんで、って…」

 顔青いし服濡れたままだから拭いた方がいいだろ。ティッシュは今くしゃみをしたからっていう普通の理由なんだけど。困って眉を下げると、男も困ったように視線を下げた。

「おれ…何も持ってない。金、も…」
「いや…金とか、いいですから」

 というかこれだけで金取らねえよ。呆れながら答えると、男は顔を上げ、目を丸くした。

「…え?」

 ……もしかして、俺って人相悪い顔してるのか? そうだとしたらショックなんだけど…。いや、それかこの人よくカツアゲとかに遭っているんじゃ…。それなら仕方ないかもしれない。

「これはただ俺がやりたいからやってることなんで、気にしないでください。はい、これ」

 俺は男の手に無理矢理タオルとティッシュを握らせる。手が触れた時大袈裟にビビられたが、俺の中ではもうこの男はカツアゲによく遭う人だったので仕方ない仕方ないと頷き納得した。

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