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何にしても、家に入らなければ連絡できない。近付いて傘を閉じ、鍵を取り出して開ける。それからデカい体を抱え起こそうと触れる。ぞっとするほど冷たい体にぱっと手を放してしまった。早く体を温めないと。俺はもう一度体を抱え、そおっとドアを開ける。意識を失っている男というのは、これほどまでに重いのか。
時間をかけて部屋の中まで入れた俺は、力尽きて床に寝転んだ。しかし、俺の体も男の体もびしょびしょだし、部屋は寒いし、腹も減ったし、やらなければならないことがたくさんある。…とりあえず、風呂を沸かそう。警察や救急車に電話するのは様子を見てからにするか。俺はゆっくりと起き上がって、まず暖房をつけた。そして色々な疲れでふらふらする体のまま風呂を沸かしに行った
戻ってくると、男がぶるぶると震えていた。慌てて駆け寄る。最初に見た時より顔色は良くなっていて、ほっと息を吐く。俺は男の肩を揺らして声をかけた。
「大丈夫ですか」
男の瞼がぴくりと動いた。そしてゆっくりと開かれ、ぼんやりとした目が天井を見た。「あの」呼びかけると、男の目がこっちへ向く。黒い目と視線が合って、俺は暫し見惚れた。――こんなイケメン、生で初めて見た。
男の目はじっと俺を見ていたが、ハッと目を見開くと突然体を起こした。
「わっ!?」
俺は吃驚して手を引っ込める。ドキドキと心臓が煩い。男は警戒するように離れながら、俺を睨んだ。
「……誰」
しゃ、喋った! 綺麗な低音だ。イケメンは声まで良いのか…。
「この家の者ですけど…」
「なんで、おれ」
ここに…とたどたどしく話す男。俺が訊きたいんですけど、と思っていると、男がくしゃみをした。
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